西日本新聞 春秋
8月28日 西日本新聞 春秋より
阿蘇山、桜島、玄海、筑前、日田丸、ばってん,めんたい。九州の観光名所や地名、
方言に名物も。ファンならば気付いただろう。これらはNPO法人、九州プロレスの
選手の出身地にちなんだリングネームだ。「九州プロレス見た?」「百聞は一見にしかず
ですよ」。最近そんな言葉を聞くことが多かった。今月初めに開かれた旗揚げ16周年
記念大会は3500人の観衆で大盛況だった。会場は大相撲九州場所が開かれる九州国際センター。
チョップが厚い胸板を打ち、巨体がマットにたたきつけられる生の音が響く。流血や過度な
反則はご法度。磨き上げた技をぶつけ合う場面もあれば、コミカルな選手が笑わせる場面も。
誰もが楽しめるショー。選手の名を叫び「がんばれぇ!」と応援する子供の姿が目立つのは、
入場無料だから家族で来やすいことも理由だろう。ほとんどの大会が無料なのは地場企業の
協賛があればこそ。九州を元気にしたいとの理念に共感が広がっている。試合のない平日、選手は
福祉施設のお年寄りや障害者、幼稚園などを訪ねて交流する。その数は2千カ所を超えた。
理事長兼プロレスラーの筑前りょう太さんは慰問と呼ばず、現状と戦うファイター同士の
「元気の交換会」と名付けた。いつも大会の締めくくりは「九州ば元気にするばい!」のかけ声。
九月以降も各地を巡る。あの熱気をひとたび浴びれば、誰かに勧めたくなる。